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ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第六部

1 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 20:01:53 ID:GiMVl5Pq
このスレはジョジョの奇妙な冒険のキャラクターを使ったバトロワをしようという企画です。
二次創作、版権キャラの死亡、グロ描写が苦手な方はジョセフの様に逃げていってください
ちなみにこの企画は誰でも書き手として参加することができます。
僕たちジョジョロワ住民は……作品が投下されるとくるい、もだえるのだ 喜びでな!
初心者の方も大歓迎です。書く技術は承太郎のようにやっていればそのうち覚えることができます
が、マンハッタン・トランスファー程までとはいいませんが、億泰よりは空気を読むことを推奨します



まとめサイト
http://www10.atwiki.jp/jojobr2/

したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11394/

前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第五部
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1240232945/

2 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 20:05:16 ID:GiMVl5Pq
【第一部:ファントムブラッド】6/11
○ジョナサン・ジョースター/○ディオ・ブランドー/○ロバート・E・O・スピードワゴン/
●ウィル・A・ツェペリ/○エリナ・ペンドルトン/○ジョージ・ジョースター1世/●ダイアー/
●黒騎士ブラフォード/○タルカス/●ワンチェン/●ジャック・ザ・リパー

【第二部:戦闘潮流】4/10
○シーザー・アントニオ・ツェペリ/●リサリサ(エリザベス・ジョースター)/○ルドル・フォン・シュトロハイム/
●スージーQ/●ドノヴァン/●ストレイツォ/●サンタナ/●ワムウ/○エシディシ/○カーズ

【第三部:スターダストクルセイダース】9/15
○ジョセフ・ジョースター/●モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○J・P・ポルナレフ/○イギー/
○ホル・ホース/○ラバーソール/○J・ガイル/●エンヤ婆/●ンドゥール/
○オインゴ/●マライア/○アレッシー/●ダニエル・J・ダービー/●ヴァニラ・アイス

【第四部:ダイヤモンドは砕けない】9/12
●東方仗助/○空条承太郎/○虹村億泰/●広瀬康一/○岸辺露伴/○山岸由花子/●矢安宮重清(重ちー)/
○トニオ・トラサルディー/○川尻早人/○片桐安十郎(アンジェロ)/○音石明/○吉良吉影

【第五部:黄金の旋風】12/15
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○グイード・ミスタ/○レオーネ・アバッキオ/
○パンナコッタ・フーゴ/●トリッシュ・ウナ/●サーレー/○ホルマジオ/○ペッシ/○プロシュート
●ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/○ティッツァーノ/○チョコラータ/○ディアボロ

【第六部:ストーンオーシャン】 9/15
○空条徐倫/●エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/
●エンポリオ・アルニーニョ/●ロメオ/○グェス/●サンダー・マックイイーン/●ラング・ラングラー/●ケンゾー/
○ヴィヴィアーノ・ウエストウッド/○ミュッチャー・ミューラー/○ドナテロ・ヴェルサス/○エンリコ・プッチ

【第七部:スティール・ボール・ラン】 5/10
○サンドマン/○マウンテン・ティム/○リンゴォ・ロードアゲイン/●オエコモバ/
●マイク・O/●スカーレット・ヴァレンタイン/○ブラックモア/○フェルディナンド/
●ミセス・ロビンスン/●ベンジャミン・ブンブーン

【54/88人】

【支給品・生物】
○サヴェジ・ガーデン鳩/○ココ・ジャンボ亀/○ヨーロッパ・エクスプレス馬/●ダニー犬/●ヴァルキリー馬
【スタンド生物】
○モハメドアヴドゥ竜/○ロビンスン翼竜A/○ロビンスン翼竜B/
【支給品・人間】
●空条承太郎のワイフゾンビ/○吉良吉廣/
【スタンド】
●ヨーヨーマッ/●アヌビス神/●ブラック・サバス(本体のポルポは生存?)

3 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 20:09:40 ID:GiMVl5Pq
投下完了

今晩中に投下がある模様

4 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 20:18:55 ID:9185CQx2
>>1
乙です

5 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 20:19:31 ID:4+I1+J41
乙一

6 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 21:00:08 ID:WMPOTcAh
>>1
お前の命がけのスレ立て、僕は敬意を表するッ!
乙!

7 :BIOHAZARDU ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:44:02 ID:9185CQx2
「じゃあ、行くとするか」

アバッキオの残り時間からすると長すぎるとも感じられる情報交換が終わった。
先程よりも一層蒼白さを増した顔でアバッキオは歩き始める。
民家のドアを開けるのはイギーのザ・フール。先行するのはホルマジオ。
ムーディ・ブルースのリプレイは続けるものの、決して奇襲はさせない。
何があっても対応できるような陣形を組み、彼らは民家から出た。


彼らの耳が風切り音を捉える。


出てから間髪いれずに飛んでくる何か。
弾くか、避けるか悩むホルマジオだったが飛来するもののスピードの考慮して安全に回避することを選んだ。
ここでイギーの手を煩わせていたらアバッキオの守護に裂く余裕が無くなるとも考えてのことである。
体を下げるわけにはいかないから着弾点を予測し、その場を離れる。
音がしてからこの動作を行うまでに実に二秒。
実践で培ってきた判断力がなせる業だ。
しかし考えることが少なかったこと、これは彼の過失である。

(コイツは……銛か! チッ、防いでも下手したらメザシになってたって事か畜生!)

スタンドの視界から見えた形状。
細長い棒状のボディの先端についた鏃、鈍い金属製の光沢。
突き刺されば人間などひとたまりもないという事は心で理解できた。
軌道を見るに避けたらアバッキオに刺さるということはないようなので襲撃をかわしたことに一息吐く。

(アバッキオの言ってた事が正しければ飛び道具になりえるのは後は謎の鉄球と拳銃だけ。
 正面から気を張って防ごうと思えば防げないモンじゃねぇ!)

スタンドの、近距離系の力で投げられたものは威力という点で言えば拳銃のそれを上回る。
明らかに投擲向けの武器であった銛を紙一重ではあったといえども回避できたことにホルマジオは希望を見出す。


ズルリ


「はっ……?」

足が滑った。それだけは知覚することが出来た。
次に感じたのは背中の一部を“喪失”した感覚。
明確な“死”の存在をホルマジオは感じ取る。
差し出された、いや、支えてくれた“手”の存在を知るまでは。
鼻を鳴らしながらイギーは心中でぼやく。

(しょうがねーしょうがねー言ってるけど一番しょうがねーのはオメーだな。
 二人して頼りない連中が揃っているからよ、俺が何とかしねーとよ!
 ジョリーンのヤツも今どうしているか心配だし、とっととやってとっとと帰るか!)

もう一度だけ、実に不機嫌そうにイギーは鼻を鳴らした。



★  ☆  ★

8 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:44:13 ID:sKOus7+V
 

9 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:45:21 ID:sKOus7+V
 

10 :BIOHAZARDU ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:47:08 ID:9185CQx2
おお、一人も死ななかったか。連中も中々やるな。
アバッキオはそう長くもちそうにないだろう。放っておけば失血死するか。
あの紙を上手い角度で開くようにするのは中々骨が折れたからなぁ。
最終的には臭い隠しの黴でドアに貼り付ける事にしたんだが。
日本人にはこれによく似た伝統的で古典的な悪戯があるって聞いたがあれは黒板消し。
せいぜい服が汚れてイラッとするだけだ。
だがな、俺の罠は服が汚れるのは同様だけれどもゾッとするんだ。
引っかかった瞬間のアバッキオの顔を見たか?
見開いた目、半開きで固まった口、死を覚悟したんだよなあれは。
あそこで生き残ったのは運が良かったか? それとも悪かったか。
間違いなくヤツは後悔するだろうよ。
いや、俺が生き延びちまったことを後悔させるんだ。
この戦いが終わる頃にはきっと『何であそこで死ねなかった』ってね。
それにホルマジオへのトラップも上々だったな。
本当にあそこへ行ってくれるか不安なところもあったが案外計算どおりに動いてくれて助かったよ。
滑った瞬間のアイツの表情も同様に最高だった。
何が起こったか分からないってマヌケな顔を見たときは腹を抱えそうになったよ。
アイツしかいないって状況だったら間違いなく堪え切れなかっただろうね。
そして最後に自分の死を覚悟した時の顔。
大の大人が思わず目を瞑った様は実に見苦しい。見苦しいからこそ素敵であるんだがな。
さて、次はどうしよう? とりあえず数分ぐらい焦らしておいてやるか。
ストレスで煮立っていく様を見るのも楽しい、苛立ちによって隙が出来てもおいしい。
まさに一石二鳥ってヤツだ。
時間つぶしがてらに支給品の方も見ておくか、武器は有り余ってるからな。
銛なども回収すればまた使えるだろう。
こういう小物も応用すれば色々と使い道があるのは分かったから考えてみるのも乙だ。



む? ムーディ・ブルースで俺の追跡をするんじゃないのか?
明後日の方向へ行ってるということは……逃げているという事だな?
興ざめだ。どっちにしろ殺すっていうのは変わらんがな。
常に追う側だったから、たまには挑戦者を叩きのめして殺すということをやってみたいのだが。
まぁいい、逃さなくてはいいって話だからな。
さて俺もボチボチ歩き出すとするか、暇つぶしのおもちゃはたくさんある。
数分くらいならばあっという間に費やせるはずだ。
さて、最初に出てくるのは――鉤爪か。
リーチと切れ味はいいと思うんだが如何せん動かしにくいってのは問題だな。
機動性が皆無に近い我がスタンドならばそのデメリットも小さいか?
とりあえず現在の段階ではこれをつけるのは保留だな。
次は何んだ……ナイフか。
殺傷力溢れるって訳じゃないがある意味俺の一番得意な獲物ってやつだ。
死なないように気を遣いつつゆっくり解体する、この殺し合いでその機会があればいいんだが。
他には特筆するほどの支給品はないな。
改めて思うが案外色々なものが支給されているみたいだな。
殺し合いに関連するものばかりだと思ったがビールに古地図、挙句の果てにはドレスか。
主催が何を考えているのか本当に分からん。
荒木なりのジョークってヤツか? 考えても無駄なことだろう。
そしてディバッグの最深部。本当にそこの部分にあった“それ”。

「そろそろ襲撃の頃合か」

黒い金属の塊、先刻も確認した銃器、不思議と重さを感じさせない謎の拳銃。
これがないと遠くからの奇襲も糞もない。
少しだが配置したスタンドの陣形が乱れてきてるぜ。
予備があるから弾数に余裕があるとはいえできれば一撃で決めたいところだな。
これから先にも銃は重宝する。
そんなことを考えながら俺はカメラをグリーン・ディの方へと手渡す。
両腕で照準を合わせ、いつでも狙い打てる体制へと入った。

11 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:48:18 ID:sKOus7+V
 

12 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:49:16 ID:sKOus7+V
 

13 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:49:57 ID:sKOus7+V
    

14 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:50:11 ID:9185CQx2
銛と足元に置かれた小球の罠を切り抜けてから数分。
どこから来るのか分からない攻撃、しかも上下からもくる可能性があるそれは彼らの警戒心を存分に煽った。
たった数分、されど数分。
焦りは精神力を磨耗させ、現実世界に隙という形となって現れ始める。
しかし、姿を見せない襲撃者はここから更に数分間焦らしをかけた。
ホルマジオが積もった苛立ちのぶつけ所を見失い電柱に怒り任せの蹴りを入れる。
イギーが今にも吠え出しそうに表情を歪めて大きく唸り声を上げた。
アバッキオの足取りも徐々に覚束ないものになっていく。
そして彼ら三人にとって致命的な隙が生まれた。
ホルマジオの背面をカバーしていたスタンドに微妙にだが死角が生まれたのだ。
引き金にかけた指をゆっくりと曲げる。
殺しに対する罪悪感などローティーンの頃には既に捨て去っていた。
表情から読み取れるのは仲間を急に失った二人がどのような反応をするのかという期待だけ。
指の動きが終わりと告げると共に、辺一面に軽い音が響き渡った。

「なっ!? ホルマジオ! おい返事しやがれホルマジオ!」

アバッキオの狼狽した声、イギーの悲痛な鳴き声。
それから少し遅れてホルマジオの体が揺らぐ。
頭部、脳を破壊したことを確信し、チョコラータは満足げに頷く。
膝折れ、懺悔するかのような体勢で一旦動きが止まった。
傍に立つスタンドのほうも細かい粒子となって消えていく。
次第に薄くなっていく影はホルマジオの命が尽きつつあるということを如実に表す。
“養分”が下に行ったことを確認してカビは繁殖を始めた。
二、三呼吸ほど間をおいて上半身も前のめりに倒れ、彼の全身を緑色が覆った。
最初に仕留めた獲物は彼の胸に達成感を与えるには十分すぎるほどである。

「できればあらん限りの苦痛を与えて殺してやりたかったところだがな、後二人もいるんだ。
 犬のほうは分からんがアバッキオのほうはきっと楽しませてくれるだろう。
 見ろ! あの悔しそうな顔を! 実に最高の相手じゃないか!」

軽く俯き気味のアバッキオの様子がチョコラータを興奮させる。
殺した甲斐があったものだ、彼は心の底からそう思う。
唯一の不満を挙げろと言われれば、ビデオのズーム越しでしか見ることが出来ないという事であったが、
それを差し引いても十二分に満足の行く表情を眺める事ができた。
物言わぬ死体へと嫌味を込めつつ賛辞の言葉を贈った。

「ホルマジオ……裏切り者とは言えども俺はお前に敬意を表そう、君のおかげで実にいい物を見ることが出来たよ。
 地獄で暗殺チームの仲間のギアッチョとやらに誇ってくるがいい、俺の快楽の礎になれたという栄光をな
 暗殺チームの仲間もアバッキオたちもそっちへ送るからあの世でも不自由はしないだろうな
 そうだ、生きていたほうが苦しいかもしれんからなぁ」

脳内から分泌される麻薬が彼の気分を高揚させる。
しかし、理性的な部分が極限のところでせめぎ合い叫ぶことだけは防いだ。
次はどちらを狙うか? 拳銃を構えつつ悩む。
銃口を交互に動かし、彼らの命を握っているという優越感に浸った。
一通り快楽を貪った後は今までいた見渡しの屋根から飛び降り、特定されぬうちに他の場所へと移動しようとする。


彼の体に悪寒が走る。
原因は分からないが何となく嫌な予感がしたのだ。
一歩、たったの一歩であったがたたらを踏んでしまうチョコラータ。

「しょうがねぇなぁ〜 勘のいい野郎ってのは嫌いなんだ、全くよぉ。
 この軌道じゃあたらねぇからな。おまえさん運が良かったな〜」

下から急に現れたホルマジオ。
通常ではありえない速度での攻撃はチョコラータのシャツを切り裂くだけに留まった。
自分の悪運の強さにホッとするチョコラータと、それに対して苛立ちを隠せないホルマジオ。
両者は向かい合い、真の意味で戦いの火蓋は切って落とされた。

15 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:51:11 ID:sKOus7+V
 

16 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:51:57 ID:sKOus7+V
 

17 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:53:05 ID:9185CQx2
「ハッ、人様にとやかく言えるような素敵な仕事をしてたって訳じゃないがな、
 テメェがマトモな野郎じゃないってことだけはよ〜く分かるぜ。
 それに俺とギアッチョのつながりを知ってるって時点でお前はこっち側か」
「そうだな、貴様ら暗殺者に言われたところで説得力はない。が、あえて否定したりはしない。事実だしな。
 お前達は仕事で殺しをするが俺は自身の快楽の為に人を殺す」

ホルマジオが地面へと唾を吐き捨てた。
地へと落ちるのと同時に彼は駆け出す。
狙うのは相手の首。
先のイギーとの邂逅により、敵のスタンドの格闘能力は低いと判断したゆえの行動だ。
小細工の聞かないこの状況なら勝てる、そうホルマジオは踏んだのだ。
今回は絶対に対象を見失うわけにも行かないし、カビがある以上は下に攻撃する術が少ないので敵を縮小させる気はない。
だが殺傷能力という点から彼は右手に存在する“爪”を使用する。
チョコラータは自身に迫る右腕をスタンドの両腕を使用して止めた。
そう、つまりこの時点でホルマジオの左腕は完全にフリー。
無防備なグリーン・ディの右頬へと叩き込まれる拳。
本体へのダメージのフェードバックにより砕けた奥歯を吐き散らかしながら彼は倒れこむ―――リトル・フィートの腕を両腕で掴んだまま。

「ぐっ! テメェそれを狙ってやがったか!」
「お前のスタンド能力の発動条件は一目で分かったからな。
 最も効率のイイやり方がこれってわけだ。カビによる攻撃をかねているからなあああああああああああああああ!」

スタンド能力を使用する気がないというのは知らぬことだが、チョコラータの行動は間違ってはない。
外見だけでへビィ級の存在だという事が見て取れて分かるグリーン・ディ。
耐えかねたホルマジオの腕が僅かに下へと下がった。
瞬く間にカビによって包まれていく右腕。
たまらず、チョコラータの腕を両腕で掴みなおす。
……気がつけば掴んでいたのはスタンドの左腕のみとなっていた。
ハッとした表情でホルマジオが正面を向く。
迫る拳。
ガードに回す時間も余裕もない。
意趣返し。当たった箇所はホルマジオがチョコラータを殴った場所であった。
不安定な体勢だったのが幸いし口の中を切るだけに留まるも、彼は冷や汗を流す。
二発、三発、四発。彼の口からも根元から折れた歯が飛ぶ。
唇に付着した返り血を舐め取りつつ、満足げな顔で笑う。

「いい顔になったじゃないか、さっきの呆気ない死に様よりはずっといいと思うぞ」

あざけりの言葉にホルマジオは小さく返した。
頬が腫れてしまったせいか何を言っているか聞き取りづらいがチョコラータも確かにそれを耳にする。
わざとらしく耳に手を当て、聞き返した。

「すまないがもう一度言ってくれないか? 俺に何か言いたいんだろ? はっきりと言ってくれよ」
「そのい…………おれ………った」

なおも聞き辛い発音で喋るホルマジオ。
再度聞き返そうと口を開け―――――――

「そこがいいんだって言ってたんだよこのヌケサク」


小石がチョコラータの脇腹を貫いた。


ポケットの中に小さくして仕込んでおいた基本支給品の鉛筆、そして小石。
今の攻撃の原理は、鉛筆にかけていた能力を解除。
その反動で飛んでいった小石をチョコラータに当てるというシンプルなものであった。
口からも血を流し、ホルマジオを憎憎しげな目で睨む。
グリーン・ディはリトル・フィートの腕を離してしまっていた。

18 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:53:37 ID:sKOus7+V
 

19 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:54:03 ID:9185CQx2
「おいおい駄目じゃねぇか、ここで腕を離しちまったらよぉ。
 敵に喰らいついたならば死んでも離さねぇ……これが基本じゃねーか。
 俺の仲間じゃお前みたいなヤツをマンモーニっていうんだぜぇ」

まっ、俺は喰らいつけないときは深追いしないがなと小さく付け加える。
穴の開いた腹を押さえながら怒りの篭った瞳でホルマジオを見据えた。
形勢は当初より完全に逆転した。
手数の増したホルマジオを攻撃を凌ぐので精一杯。
小石の弾丸を警戒し、己も同時に拘束してしまうさっきの手は使えない。
何とか爪の一撃だけはかわしているがそれも時間の問題だろう。
チョコラータの表情が屈辱で歪んだ。

(やりたくはない……やりたくはないがあれをやるしかないのか?
 クソッ! さっきまでのいい気分がこれで全部台無しだッ!
 ホルマジオ、お前も俺の復讐の標的になったぞ!)

腹を決めたチョコラータ。
左腕を弾いた後にスタンドの体をリトル・フィートへとぶつける。
相手がよろめくのを視認すると同時に後ろへ飛びのく。
追撃がないことを疑問に思うホルマジオ。
そんな彼を他所にチョコラータは行動を開始した。
スタンドの手を己の右腕に近寄らせ――――――――――――傷口に手刀を突き込んだ。

「ぐぅ……がぁっ…!」

苦悶の叫びを上げながらチョコラータはカビで塞いだ傷口をこじ開ける。
引き抜く際の地獄のような苦しみにより再度呻く。
既に体勢を整えたホルマジオが行動を取る前に仕留めようと詰め寄った。
そんな彼に対して右腕を振るい――――――



自分の血液をホルマジオの顔面へと浴びせかけた。
視界を失ったことでしばし立ち尽くすも、蹲ったりすることはない。
このまま止めを刺すことができるかもしれないだろう。
しかし彼は細心の注意を払うことを決め、撤退を洗濯する。
作戦は成功したものの、逃げ歩く彼の顔には明るさの欠片もなかった。




★   ☆   ★

20 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:55:03 ID:9185CQx2
「すまねぇが水を取ってくれないか?」

頼りない足取りで帰ってきたホルマジオは第一声で水を要求した。
イギーが砂を操作することによってディバッグを漁り、ペットボトルを手渡す。
片方の掌で作った椀へと水を注ぎ、自身の顔へと浴びせかける。
まだ痛みは引かぬものの一応視界は帰ってきた。
数回瞬きをして目の調子を確かめた後、すまなさそうに一言。

「すまねぇ、後一歩って所だったのに敵の本体を逃がしちまった。
 血の目潰し程度だったらそのまま殺れてたはずだ!」
「済んだことを気にしてもしょうがねぇ、ムカつくが責任の追及はしねぇよ。
 後一歩って事は手傷くらいは追わせたって事だ。前向きに考えようぜ。
 次やりやすくなるように繋ぐことができたってな」
「ありがとよ。だが……あの手は二度通じるものじゃないと思うぜ?
 野郎も俺の存在がいなくなれば警戒するようになるだろうよ」

あの手というのは今、チョコラータへと接近するために使用した作戦だ。

もっていかれた支給品の内訳より相手が再度拳銃を使用すると予想。
そこで、イギーのザ・フールでホルマジオとリトル・フィートの砂像を作成。
普通に作っては自衛に回す砂の量が不足するので中身は空っぽだ。
“本物”のホルマジオは一気にカビの出ないサイズまで縮んでから、ある程度のサイズまで拡大。イギーの頭上に乗っていた。
そしてワザと、かつ不自然にならない程度に隙を作り出し、攻撃をあえて受け止めて死んだように錯覚させ、
本物のホルマジオが接近しているということを察知させないという作戦だ。
余談であるが、この作戦において民家から出た際にはホルマジオは既に入れ替わっていた。
要するに銃撃の際の救出劇はイギーによるある種の自作自演だったというわけだ。

「もう一つのほうをやるべきだろうがココはな。
 テメェやイギーだって命を懸けている、俺だけ安全地帯でヌクヌクしてるってのは性に合わねぇんだよ」

アバッキオの覚悟に対してホルマジオは返事をしない。
分かっている。自分だって、チームの仲間であっても同じことを言うのは間違いないから。
しかし、敵を確実に倒しにかかるためとはいえ自分の命を捨てるのは最後の手段にしたい。
できるならば誰も犠牲にせずに勝てるのというのが一番好ましいのだから。
けれども考える時間はない、敵は今にも攻撃を仕掛けてくるだろう。
ホルマジオは腹をくくってアバッキオへと告げた。

「しょうがねぇな〜。簡単に死んじまうんじゃねぇぞ。
 死人を出して勝っても戦勝祝いのワインがまずいだけだからよ」
「ハッ! なんだかんだ言っても死に掛けの俺は早々狙われねぇだろうよ!
 むしろお前らが逝っちまわないかの方が俺としては心配だぜ」

敵に聞かれぬように小声であったが、端端から楽しげなものが読み取れる。
イギーの耳が小さく揺れる。
男達は目ざとくそれを感じ取り、イギーへと問い掛けた。

「イギー、敵の気配でも感じ取ったか?」

彼はよく観察しなければ気付かないほど小さく頷き、ある方向を向いた。
しかし、それは彼が聞き取った音源とは明後日の方角。
気付かれたことを勘付かせぬ為に別の方位を見ただけだ。
真の意思を伝えるのは足元から伸びた一筋の砂。
アバッキオたちは即座にその事に気がついた。

(確かに聞いたぜ! テメェのうめき声をな!
 このオッサンがどこまでやったか知らねぇが結構なダメージを与えたみたいだな)

おおよその敵の位置は分かったがこちらからは襲撃を仕掛けない。
そちらのほうへと警戒を深めるだけだ。

21 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:56:04 ID:9185CQx2
そして―――――     ―――――時は来た。


鳴り響く軽い音が2、いや、3。
イギーがザ・フールによって砂の防壁を生み出した。
来る方向の大まかな予測はついていたので楽に防ぎきる。
硬化を解除したことにより砂のカーテンが重力に負けて崩壊した。
三人の周囲を砂埃が包む。
人影すらも見えぬ状態が終息した時、そこにいたのはイギーとアバッキオ。
そして消えたホルマジオと同様、イギーも銃声のなった方向へ駆け出す。
残されたアバッキオは完全に無防備。スタンドを使ったとしてどこまで防ぎきれるか。
しかし、彼の下へ飛んでくる銃弾は一発もない。

「やっぱり放っておいても死ぬような怪我人は後回しにするってか?
 俺には神様に頼むくらいしかできねぇが……帰って来いよ」

アバッキオの半ば呟くような言葉に後押しされたが如く、イギーは更に加速する。
硝煙の臭いも一瞬であったが確かに嗅ぎ取った。
角を数回曲がり、直線を何mも走りきる。
彼は焦っていた、アバッキオの命のタイムリミットが迫っていることに。
イギーは最初に臭いを感じ取ったポイントの手前であろう交差点へと辿り着いた。
周りを見渡してみるも人間の気配らしきものは一切感じない。
臭いを嗅いで見る……医薬品の香りがした。

(胡散臭せぇ、本当に胡散臭せぇぞこれは。いままでカビで隠していたのにどうして臭いが明らかになった?
 ……間違いなく罠だよな。チッ! 行くしかないってやつだよなこれは)

意を決して曲がり角を左へと曲がる。当然右側のチェックもしてだ。
敵の本体らしき人間はいない。
あるのはここら一帯で飽きるほど見てきた民家の塀。
樹高が5m程で統一された街路樹達。
よくある設計のありふれたマンホール。
交差点で事故を起こさぬために必要不可欠の道具、信号機。
そして無造作に投げ捨てられた人間の右腕。
切り口から流れ出る鮮血がまだ止まっていないので切り落としてからそう時間は経っていないのだろう。

(あの野郎の……腕……だよな? ってことはさっきの声はこれをやったときのヤツか?
 けっ、本当に狂っていやがる。まさか自分で自分の腕をちょん切るたぁな)

恐る恐る近寄っていき、スタンドの腕で触れてみる。
………………何も起こらない。
が、害があるわけではないがとにかく不気味なのだ。
自分たちが進んでいく方向とは逆側に右腕を投げ捨てる。
落ちていく際にカビに包まれた肉塊。

(うへぇ……体から一度離れれば元々自分のものであってもお構い無しってかよ。
 気色悪いとか胸糞割るいとかそういう次元じゃないぞ!?)

げんなりとした表情となるイギー。
これからどのように本体を探そうか思索しようとしたところで―――――


鉄塊に大砲を叩き込んだような音がした。
マンホールによって塞がれていた穴よりチョコラータは出。
音がした時点で振り返ったイギーであったが一歩遅れた。
両腕に装着した鉤爪を振り回すグリーン・ディ。
砂を展開して盾に、しかし集中を欠いた状態では強度に不安が。
刃の先が砂の壁を突破して現れた。
大分勢いがそがれているとはいっても喰らえば致命傷。
その一撃がイギーを捉え――――――――――毛皮にぶつかって止められた。

22 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:56:58 ID:9185CQx2
チョコラータが狭く薄暗い穴倉の中ではなく、見通しの良いところにいれば即座に気がつけただろう。
イギーのサイズが通常よりも二回りは大きいということに。
全身に砂を密着させ、それを硬化しある種の鎧とする。
当然機動力を大きく損なうので戦闘中に常時使用できる代物ではない。
けれども奇襲の一撃を防ぐことのみを考えれば十分すぎるものがあった。
動揺を見せたチョコラータをイギーの上に乗っていたホルマジオが元のサイズへと戻りつつ襲う。
爪の一閃、かわしきれずに頬に大きな一文字を残す結果となった。

(クソッ! 喰らってしまったぞ! ヤツの能力は何だ?)

能力の発動に向けて身構えるチョコラータ。
しかし、何も起きる事はなくその事が彼にホルマジオの能力を誤認させることとなった。
本人が不利になるということを知って、あえて能力を使用したという事を知らずに。

(ヤツの能力はある種の瞬間移動か!? しかし、それではさっきの小石の説明が付かん……)

分からぬ事ではあったが、それを考えている暇はない。
対峙するホルマジオは爪に付いた血液を軽く振り落とした。
イギーのほうも体を覆っている砂をスタンドの本体へと戻し臨戦態勢を取る。
二対一、圧倒的に不利な状況下でチョコラータの戦いは始まった。

「コイツを取り付けるにはそりゃあもう、死ぬ思いをしたってもんだ。
 新鮮な傷口に異物を当てたらそれは痛いに決まっている、実に、実に痛かったよ。
 だからな……お前らも精々苦むんだなあああああああああああああああああ!」

宣言と共に両腕に取り付けられた鉤爪を振るう。
実際のところ、彼の武器は苦労した分だけいい働きをしている。
スピードは減ったものの、それを補うに十分すぎるリーチに力ずくで圧し切ることのできるパワー。
元来より下半身がないグリーン・ディの形状から考えて重心が崩れることもない。
剣術などの心得がないのでただ振り回すだけだが、脅威と言っても過言ではないだろう。
事実、ホルマジオも攻めに転ずる機を見つけることができずに防戦一方といった感じだ。
だが彼は攻めなくてもよいのだ。傍らには頼れる仲間が一匹。

「よしっ! やれイギー!」
(言われなくってもタイミングぐらいは合わせられるっつーの!)

ザ・フールの硬質化した爪先がチョコラータの肉体を切り裂いた。
咄嗟に回避行動を取れたため、傷自体はそう深い物ではない。
しかし、浅い傷としても幾度と無く攻撃を喰らったとしたら?
この二人のコンビプレーはチョコラータに防御することすら許さない。
比較的近距離での戦闘に優れたリトル・フィートが相手を足止めし、ミドルレンジからの攻撃に適している砂が間を読んでダメージを与えていく。
ゆっくりと、しかし確実にチョコラータの体に刻まれていく生傷。
彼の視線がチラチラと後ろを向いた。

「逃げる気か? それは正しい判断だ。俺だってこんな状況になったら逃げるぜ。
 だがな……残念な事に俺達はお前を逃がす気がないんだ」

怒るわけでもなく、哀れむわけでもなく、ただただ冷徹に告げられた死刑宣告。
とは言っても決して深くまでは飛び込んだりしない。
あくまでも敵の懐に潜り込むのはいざという時に対処しやすい方だ。
彼の脇腹に何度目か分からぬ攻撃が加わる。
そろそろ出血量的に余裕の保てない頃になってきただろう。
本体のチョコラータは俯きがちになり、完全にスタンドの視覚に任せている。
先の苦い経験より、ついついイギーへと忠告してしまうホルマジオ。

「“右手”からの目潰しに俺はやられたんだ。右はないがお前も注意しな」
(分かってるよ、そもそも目潰しされても片方が残るように二人できたんだろ?
 ちょっと焦ってねぇかお前? 手負いになったこれからがやばいんだぜ)

ホルマジオの耳の中で銃声がやけに長く響いたような気がした。

23 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:57:09 ID:sKOus7+V
 

24 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:57:54 ID:9185CQx2
嫌な予感がしたホルマジオは後ろに引いてチョコラータから距離を取る。
そして横目でイギーの姿を確認した。
……ちらっと見るつもりが気がつけば顔の全体がそちらを向いている。
目が見開いた、口が勝手に開く。

「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」




そこにいたのは後頭部に穴を開け、白黒の毛を緑色へと染め直したイギーの骸。



ふと視線をずらしてみる。
拳銃を握り締め、銃口をこちらへと向ける切り離されたチョコラータの右腕。
吐き出された鉛玉をスタンドを前面に押し出すことによって防ぐ。
背後からは悠然と歩み寄るチョコラータの影。
瞬時にして自身の敗北を悟るホルマジオ。

(しょうがねぇ……潮時ってやつか)

悔しさで胸が焦がれるもこの事実は揺るがしようが無い。
手負いの相手とは言えども自由に動く右腕と本体を同時に相手取るのは荷が重過ぎる。
噛み締められた唇からは血が滲み出した。

「リトル・フィート」

本人にしか聞こえないような声で呟き、能力を発動。
イギーの忘れ形見であった砂を蹴り上げて砂埃に身を包みつつ縮んでいく。

「くそっ!」

もう一度だけ小さく悪態をつき、ホルマジオは戦場より離脱した。

「逃がしたか」

さほど残念がる様子を見せず、チョコラータは己の右腕を拾い上げた。
なおも血を垂れ流す全身の傷口をカビで包み込んでいく。
切断した右腕もカビによって断面を接着した。
指を動かして異常が無いかどうかを確認。
結果に満足したチョコラータは歩き始める。

「少し……血を失いすぎたな。まぁ、あの犬への復讐は果たせたしよしとしておくか。
 ホルマジオを殺し損ねたのは痛かったが、この傷だから逆によかったかもしれん。
 さて、どこか適当な民家にでも入って休息を取るとするか」

25 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:58:14 ID:sKOus7+V
 

26 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:58:54 ID:9185CQx2
ホルマジオとイギーが去ってからある程度の時間が経過、アバッキオの体が僅かに揺れた。
彼の命を司る砂時計が急速に全ての砂を振るい落とそうとしているのだ。
半ば朦朧としていきた意識の中で彼は決断を下す。
二人を追いかけて戦場へと向かうことを。

「このまま待ってても血がなくなって野垂れ死にするだけだ……。
 まだ戦いが終わっていない可能性だってありうるがその辺はしょうがねぇ。
 万が一足手纏いになりそうだったらばとっとと死んでやるよ」

半分足を引きずるような形で彼は歩き始めた。
モデルのような華麗な歩き方でも、大地を力強く踏みしめた歩き方でもない。
非常に頼りない足取りであったが瞳に輝く意思だけは消えずにギラギラと光っていた。
十m前後を歩いたと思いきや塀に寄りかかって息を整える。
道端にある石に躓きそうになって思わず冷や汗をかく。
遅々とした歩みであるが彼自身がそれを気にすることはない。
目的地へと向かっているのだ。自分はゴールへと向かっている、そう確信して。
少なくとも銃声の発生源の近くまでは行くことができたのだ。
残り3m、2m、1m、この交差点を左に曲がって―――――


「イギー?」

カビに覆われ倒れ伏す死体と辺り一面に散らばった砂を見た。



そうか、やられちまったのか。
俺の心の中でやけに冷静に答えは出てきた。
イギーと全く同じ体格、命の抜け殻となった消えつつある砂。この二つがあるのに違うとは言えまい。
あれだけ時間が経っても帰ってこなかったときに既に嫌な予感はしていたんだ。
ただ、あんまりにも死体が酷すぎて逆に実感が湧かない。

「お前は……本当にイギーなんだよな?」

何気なく呟いた問い掛けに“肉塊”は返事をしてくれない。
そして気にかかるのはもう一人の男の事。
ホルマジオの姿がないかを見渡してみたが―――――いない。
死体がないのだろうし恐らく逃げたのだろう、このことについてはあいつを責める気は一切ない。
勝てるか勝てぬか分からないこの状況ならば妥当だ。
少しでも多くの情報を持ったやつが生きて帰る。これは正しいと俺は個人的に思っている。
見た限りで把握できる大まかな情報を確認した後に、半身を傍に呼び寄せる。
己が分身の力を使って敵本体を此処を立ち去る直前まで巻き戻す。
本当は戦闘の部分もじっくり見たかったが俺の命が足りねぇ。
数分前のことだからか巻き戻しはあっという間に終了した。
……なんだ、ヤツも傷だらけなんじゃねぇかよ。
全身のいたるところから血が滲み出して服をどす黒く染めていた。
足取りだって俺と似たり寄ったりだ。

「行かねぇといけねぇよなこれは……」

ヤツを倒さなくっては休息どころか止血すら碌にできない。
勝ち目があるかは……かなり微妙だ。
だが、此処で退いちまったらイギーの死が文字通り犬死になっちまう。
生意気な犬だったがな、命懸けで戦ったってことは誰にも否定させねぇ。
リプレイをここでやめにしてムーディは俺の護衛に回す。
どこから来るか分からない攻撃にぶるってるわけじゃない
血が手がかりになってヤツの行く手を教えてくれているんだ。
じゃあ、足は重いがよぉ。追跡のほうは再開させてもらうとするぜ。


27 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:58:59 ID:sKOus7+V
 

28 :創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:59:49 ID:sKOus7+V
  

29 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/24(水) 23:59:53 ID:9185CQx2
★  ☆  ★



血痕の後を辿り、アバッキオは一軒の家屋へと到達した。
支給品にはこれ以上罠に使えるものはなかったと判断。
念のためにドアに耳を当ててみるが、物音も人の気配もしなかった。
ゆっくりとドアを開け、僅かな隙間より内部を見渡してみる。
人の気配はない。唯一の手がかりである血痕は点々と続いていた。
今までのことを考えると逆に不安がつのる。
が、アバッキオはあることに気がつき自嘲気に笑う。

「明らかに……俺は見下されてるってわけか。
 非戦闘型の一体くらいには真正面から行っても絶対に勝てるってなぁ」

一瞬だけ腹を立て、すぐにその考えを改めた。

「油断してるならさせてやるぜ、俺はその隙を突いていくだけだ」

思い直したアバッキオは再度血痕を追う作業を再開した。
追跡の一時的な終着は階段。
血痕は上へ上へと続いていっている。

「二階か……高所はヤツのテリトリーだな。
 いや、今更不利だなんだで怖気づいてるようじゃ決してやつには勝てねぇ」

段差に右足を乗せた、もう後戻りはできない。
手すりに体重を預けつつ、一段一段を着実に踏みしめていく。
弱った体を上り階段の傾斜が蝕んでいった。
息が今まで以上に荒くなる。
命が急激に削り取られていくのを感じた。
それでも彼は休憩を取ることなく前へ、前へと進む。
瞳に映るは頂上。
そして、二階のどこかに潜んでいるであろうチョコラータをも見据えていた。


★  ☆  ★

30 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:00:31 ID:rlrKwoJp
    

31 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:01:13 ID:sKOus7+V
   

32 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:01:58 ID:rlrKwoJp
 

33 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:03:02 ID:9185CQx2

金属同士が擦れあう小さな音と共にアバッキオがドアの向こうより現れる。
ベッドに腰掛けていたチョコラータの顔が綻ぶ。

「ようこそ、レオーネ・アバッキオ。よくぞここまできたものだな。
 ご褒美とはいってはなんだがハンデをやろう、俺の慈悲に感謝することだ。
 “カビを解除して戦ってやる”どうだ、かなりおいしいだろう?」

彼には戦闘をするという意識が一切ないのが見て取れた。
満身創痍の男をじわじわといたぶって虐殺する、そのことしか考えていない。
ニヤ付いた笑顔をアバッキオへと向けながら手加減を申し出る。
彼の返事はない。
幽鬼の様な足取りでチョコラータの元へと向かうだけだ。
無視されたとしてもその行為がチョコラータの機嫌を損なうことはない。
これから自分のことを無視できないようにしてやろう。
このような情熱を燃やしだすのが彼の性格だ。

「そう冷たくするなよアバッキオ。
 俺からの気付け薬だ、ありがたく受け取るんだなあ!」

鉤爪付きの手袋をゆっくりとした動作で両腕へとつける。
アバッキオが無言なのも、スタンドを出さないのも消耗のためだと判断する。
意識も殆どなく、意地だけでここまで来たのだろう。
そう考えただけでチョコラータの全身が粟立ち、興奮で貌が紅潮する。
完全な無防備なアバッキオの左肩へと爪を振るい、肩の肉を抉り取った。
あっさり殺してはつまらない、この攻撃はそう語っていた。
しかし、アバッキオは怯むどころか目を瞑ることすらしない。
今までと寸分も変わらぬ歩調で迫ってくる。
次は右の腿へと刃の先端が突き刺さった。
血が湧き出てきたもののバランスを崩すことすらない。
まるで機械のようにひたすら前へと歩いてゆく。
流石のチョコラータもこの異常な出来事には頭を捻る。

「……スタンドの方か?」

彼の呟き、その考えが本当ならば合点いく。
ムーディ・ブルースの“再生”は起きた出来事を寸分違わずに再現できる。
つまりは足をもぐか、本体が死なない限りは止まることなく歩き続けるという事だ。
グリーン・ディが大きく右腕を振りかぶる。
日光を浴びて鈍く光る切っ先。
そして次の瞬間、アバッキオの胸から腹にかけて鮮血が噴出した。
それでも歩みをやめようとしない彼の姿にチョコラータは笑みを見せる。
念のために歩行の軌道より立ち退く。
アバッキオの狙いが油断して近寄ってきた自分の命を狙うことだと推測して。
幻影はそれでもなお前進を止めない。

「まだ生きてるとは随分としぶといなぁアバッキオ。
 苦しいだろ? 痛いだろ> 諦めて出てきたらどうだ?
 このままだとお前のスタンドがなぶり殺しになってしまうぞ?」

幼子に言い聞かせるが如く口調。
苦悶の表情が見たいという欲求はすぐにアバッキオに伝わった。
二度目の金属音と共に“もう一人”の方が現れる。
フィードバックしたダメージは残り少ない命を更に縮める結果となった。
しかし、もはや意味はないというのに先に部屋に入ったほうも歩みをやめない。
消す気力すら湧かないのだろう。
これから来る虐殺という名の宴の期待に目を細める。

34 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:03:38 ID:sKOus7+V
 

35 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:04:19 ID:sKOus7+V
   

36 :BIOHAZARDV ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:06:05 ID:EhaMXu7b
ドアから入ってきたアバッキオはふらつきながら歩いていた。
紅い命は絶え間なく流れ出し、言葉を発することすらままならない。
そんな彼の元へとチョコラータは歩み寄り、嘲った。

「くくく、一体どんな気分だアバッキオ?
 これから絶望の淵へと叩き込まれる気分はなあああああああああああああああああああああああああああああ!」




ドサリ




何かが倒れる音が背後から聞こえてきた。
最後の抵抗に備えてグリーン・ディを置いておいたムーディ・ブルースと思っていた方がいた方からだ。
機械のようにぎこちなく振り返ってみると、倒れていたのはアバッキオ。


理解不能  理解不能  理解不能


そう言わんばかりにチョコラータの表情が凍りついた。

「こっちにいるのはスタンドのはずだ! 何故スタンドが本体よりも先に倒れる!?
 いや……あっちが本体なのか!? ありえん、そんなわけがあってたまるか!!
あれだけのダメージを負いながらも微動だにしない人間がいるはずが――――――――――」


首元に目をやってみる、青い手が存在した。
前の見ると額に液晶画面のようなものが付いた無機質な顔……。
なんだって、そう叫ぶ暇もなくチョコラータの首は直角に曲がった。
糸を失ったマリオネットのように地面に倒れ伏す彼の体。
ベッドを紅く染めつつ、アバッキオは薄く笑う――――――――




やってやったぜ……!
何をされようと動じず、微塵も反応を見せぬ覚悟は出来ていた。
最後に倒れてちまったのは情けねぇがな……。
任務は達成したんだ、よしとしても罰は当たんないだろ?
しかし、体のいたるところから感覚が消えてってるな。
お陰様でヤツの攻撃に瞼一つ動かさずに済んだんだからこれもよしとしよう。
ムーディの最後に発揮したパワーも不思議だが火事場の馬鹿力からってことで納得しておくか。
本来の目的だった絞首だけじゃ間に合わなかったかもしれないからな。




「ッキオ……アバッキオ……」



誰かが俺を呼ぶ声がしやがる。もしかしてイギーとかじゃねぇよな?
しょうがねぇ……徐倫には悪いが俺もそっちの方へ行くか。
“あの人”も俺を許してくれるといいんだが――――――――――。

37 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:06:29 ID:rlrKwoJp
 

38 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:07:19 ID:rlrKwoJp
  

39 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:08:14 ID:rlrKwoJp
 

40 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:09:02 ID:EhaMXu7b
「ッ! やっぱり痛いからやりたくなかったわ」

カビに侵された指先を糸へと変えて引きちぎる。
足元には気合の叫びと共にスタンドのつま先が開けた穴。
緑でコーティングされた糸をそこに投げ入れ、そのままストーン・フリーで埋める。
絹のように滑らかで白い肌に真紅の血が一つのアクセントとなった。
口では痛いと言っているものの、実際にはさほど気にせずに彼女は西へと歩む。
思考のウェイトの大半を占めているのは出会ったばかりの仲間の事。
どうか、どうか無事であって欲しい。
縋るように祈った彼女の眼前にSFそのものの存在が現れた。

「あれは……トカゲ?じゃないわよねぇ。やっぱり恐竜なの?」

黄土色の鱗に鋭利な爪、掠っただけでも怪我は免れないだろうと一目で分かる牙。
トカゲと似た部分は多数存在するも、雰囲気、サイズ、そして威圧感が完全に別な種族である事を告げていた。
呆然と立ち尽くす彼女であるが恐竜は何も仕掛けてくる様子がない。
安心した彼女が念のために進路を変えよとしたと同時、恐竜は彼女のほうへ飛び掛ってきた。

「何ィ!? コイツ……早い!」

上下の運動を制限されている身では立体的な回避は出来ない。
彼女は軽く後ろへ下がることによって恐竜の着地点から離れる。
跳躍の頂点に辿り着いてしまったからはこれ以上の軌道の変化は不可能。
そう踏んだ彼女の予測通り恐竜は現在地の数メートル手前に降り立つ。
タイミング的には完璧なものであった。
着地から来る衝撃による一瞬の硬直。
如何なる生き物であってもなくすことのできぬ隙を狙って叩くつもりであった。
けれども彼女もまたスタンドの拳を振り上げたまま凍りつく。
恐竜の脚は重力がもたらした衝撃を大地を蹴るエネルギーへと変換。
初撃よりも更に勢いを増して彼女の元に飛び掛る。
我に返った徐倫が迎撃しようとするも時既に遅し。
尖った爪が彼女の肩口へと突き刺さり、血飛沫を撒き散らさせながら飛び去っていった。
声をあげることなく傷周りの肉を糸へと変え、傷に縫い付ける。
なぜ首に攻撃して致命傷を与えなかったのか疑問に思ったが、それを考えるのは後に回す。

「これは……この恐竜の特性なの? それともただの射程?」

彼女の頭が最優先に考えるのはどうしてこの恐竜はカビないのかという疑問。
いくつかの可能性が浮かんできては消える。
再度こちらへと向き直った恐竜を見据えつつ、左手を下へ降ろしてみた――――カビない。

「なるほど、カビの射程のほうだったみたいね」

ひとまずの危機は去った事を確信する徐倫。
彼女が知る由もないがこれはグリーン・ディの真の射程ではない。
殺し合いの主催、荒木飛呂彦が突出した力によりバランスを崩させないように枷を着けたのだ。
本体のチョコラータからある程度の距離を取れば“胞子”は消滅する。
一度発生したカビは消滅しないが感染が広がる可能性はかなり落ちる。これが架せられた制限。
今、徐倫に与えられたハンディの一つが消え去る。
先程までは出来なかった少し腰を落とし気味な体制で恐竜と対峙。
次は直線的に突っ込んでくる恐竜。
カウンターとして放たれた左ストレートを持ち前の反射神経でかわす。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッッ!!」

続けざまに放たれた拳の弾幕も軽いフットワークで避けていく。
一発、二発、三発、四発、五発、六発、ついに叩き込まれる鉄拳。
しかし掠める程度であったので少し後退するだけに留まる。

「第二ラウンドの開始ってヤツかしら」

41 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:09:43 ID:rlrKwoJp
 

42 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:10:27 ID:rlrKwoJp
 

43 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:12:03 ID:EhaMXu7b
岩をも砕くストーン・フリーのジャブが数発飛ぶ。
左右のステップで紙一重の余裕を残しつつ拳をすり抜け距離を詰める。

「オラァ!」

右足が恐竜の側頭部を狙い跳ね上がる。
軽く屈むことにより直撃を免れ、そのまま向かおうとする恐竜。
止まることのない右足の回転するエネルギーに左足で大地を蹴ったパワーを乗せて加速。
徐倫の体が宙に浮かび、左踵が恐竜の頭頂を狙う。
“回転”の力にも太古はついていく。
鱗が少し削ぎ取られるものの致命的なダメージには至らない。
両足が地面に付くと共に徐倫の体は再度飛び上がる。
後に残されたのは踏み込みの衝撃で抉れたクレーターとそこへ飛び込む愚か者の姿。

「やれやれだわ。このスピードと反射神経、単純なだけに面倒ね」

最初の交錯以来、恐竜が飛び上がることはない。
足を使って徐倫の隙を引き出そうと彼女の周りを走り回る。
こうなってしまっては彼女のほうも迂闊に攻撃を仕掛けることは出来なくなる。
ジャブ一発分の隙ですら見逃さないことが分かっているから。
こうして場の空気は膠着し始めた。
セオリーとしては恐竜のスタミナが切れるまで徐倫が待つべきなのだろう。
しかし、相手は始まりから今までの間に疲労の様子を一切見せない。
加えて徐倫には一刻も早くこの戦闘を終わらせる必要があった。
進退のないこの状況に歯噛みする徐倫。
痺れを切らした彼女は“障害”の元へと走り出した。

「ストーン・フリー!」

精神を研ぎ澄ました全身全霊の一撃が当たらないのだ、やぶれかぶれに放った拳が当たる道理がない。
軽くしゃがみつつ腕を掻い潜り勢いを殺さぬまま彼女に肉薄する。
咄嗟に肘を落として迎撃を狙うももう遅い。
尾によって右腕は弾かれ、気が付けば既に眼前に。
苦し紛れに放った左膝の上に器用に飛び乗り、膝に秘められた威力を殺しつつ――――徐倫の首元へ牙を突き立てた。
大きくのけぞる徐倫。しかし彼女の肌に染み出した血液の量はごく僅か。

「やれやれ、本当にやれやれだわ。捉えるのにここまで苦労するなんてね。
 逆に言えばッ! このチャンスだけは絶対に逃すわけにはいかない!」

苦しさに恐竜が思わず彼女の首筋から口を放す。
さっきのジャブとエルボーの狙いはダメージを与えることではなかった。
両腕を前に伸ばして恐竜の死角に持っていくことが真の狙いだったのだ。
そして彼女はあえて牙による一撃を喰らった。
突き立てた際に生じる隙、死角にある二本の武器。
致命傷になるほど牙が食い込む前に両腕で恐竜を抱きしめる。
いや、抱きしめるというような生易しいものではない。
腕の力によって恐竜の背骨を圧し折ろうとしているのだ。
プロレス技のいわゆる“鯖折”。
体を“く”の字にへし曲げられ甲高い叫びを上げる恐竜。
決死の抵抗が徐倫を襲う。
自由に動く前足による引っかき。
肩、顔を中心に紅い筋が無数に出来る。

「これしきの事ッ! なんて事ないわ!」

叫ぶことにより己を鼓舞する徐倫。
スタンドの背を締める力は徐々に強くなっていく。
それとは対照的に恐竜の抵抗する力は弱まっていった。

44 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:12:38 ID:rlrKwoJp
 

45 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:13:22 ID:rlrKwoJp
 

46 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:15:02 ID:EhaMXu7b
(潮時か……私も向かうとしよう)

カビの感染の心配がないこともほぼ確定した。
恐竜の視界から不利な現状を把握し、参戦の決断を下す。
放っておけば殺されることが明白、しかし勝利するためには二頭でかかれば十分すぎるほど。
その事実はフェルディナンドの腰を上げさせるのに不足ない。
アヴドゥルであった存在が大地を蹴り走り出す。
強靭な脚力により出発より数分で戦地へと辿り着いた。
締める腕へ全意識を集中する徐倫はまだ忍び寄る博士の気配に気付かない。
物音を立てずに背後まで接近し、彼女の背を狙って爪を振り上げる。
殺気を感じ取った徐倫は反射的に掴んでいた恐竜を別の方向へと放り投げ、両腕で顔と急所をカバー。
が、一手遅れていた。
今まで対峙していた相手のものよりも更に巨大な爪が彼女の頬を切り裂く。
深い傷口からは血液が流れ出し小さな河を作った。

「その首輪……どうやらアンタが本体みたいね。能力は生物以外の何かを恐竜に変えるといったところかしら?
 条件はまだイマイチ分からないけど、自分も恐竜へ変えられるとは思わなかったわ。正直ちょっと驚いてる」

本体にはついていた首輪が小さい方についていないことから元は“参加者”でなかったと推測。
自分の仮説が間違っていることに彼女は気がつくことはない。
上から下へと左手を滑らせ頬に付着した紅を親指で掬い取る。
大きく指を振り血を振り払った後に、指に残るものを舐め落とす。
そして紅く染まった唾を地べたへと吐き出し――――フェルディナンドの導火線に火がついた。

「貴様も大地を敬わぬクソ頭しか持ち合わせていないようだな!」

リンゴォに見破られた反省を生かし、極力口の中を見せぬように言葉を吐き出す。
前後から二頭が同時に跳躍した。
左か右か、特に意識することなく徐倫は右手に飛びのく。
着陸時の隙を狙うか、あわよくば二体が宙で激突するのを期待して。
放物線が上昇を止め下降を始めた。
弓のように腕を引いて構える徐倫。
二頭はぶつかることはなかったが予想通りの軌跡を描いて落ちていく。
狙うは本体である首輪付きの方。


交差した時、フェルディナンドは虚空の中で唯一の足場であるもう一頭を利用した。
一度目よりも更に高く飛ぶ大きい恐竜と地面へ叩きつけられる小さい恐竜。
どちらへ攻撃しても残ったほうの攻撃を喰らうのは必至。
地に伏す者が起き上がるのと天へ昇った彼が頂点に達したのはほぼ同時。
反撃を諦め、徐倫は二方から距離を置いた。
しかし重力の恩恵でより加速したフェルディナンド達と迫るもう一方を同時に退けるのは至難の業。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッッ!!」

ラッシュの手数により勝負を試みる徐倫。
先発として小柄なほうを向かわせ、フェルディナンド達はその後ろを走る。
小回りが聞く分、ラッシュを掻い潜りやすいという算段の上でだ。
けれども先刻の激突が告げるとおり、当たるものは当たる。
一発喰らって動きが止まったところから追撃の連打が体を叩く。
悲鳴を上げながら押し返されていく恐竜。
“囮”には見向きもせずに突進を喰らわせる。
肺から空気が抜ける感覚を味わった徐倫であったが、すぐに上にのしかかる者の顔面に一撃。
新たな傷を増やしつつも彼女は立ち上がった。
そこへ突き刺さる無情な死刑宣告。

「そう、そのパワーに対して真っ向から対峙するのは御免こうむりたい。
 だからこそ……いたぶって失血死を狙わせてもらおう」

47 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:15:10 ID:rlrKwoJp
 

48 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:16:27 ID:rlrKwoJp
  

49 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:16:46 ID:pou62lK5
支援

50 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:18:02 ID:EhaMXu7b
フェルディナンドの予告に徐倫は眉一つ動かさない。
不本意ながらも殺す殺されるの戦いには随分と慣れてしまった。
スタンドの補助を得つつ大地を蹴る。
目指すはまたしても本体。
裂帛の叫びと共に眼前へと詰め寄る。
己からの攻撃はまだ仕掛けない。
首筋を狙った一閃を左腕を使って上手く逸らす。
小柄な一匹が仕掛けてくる体当たりにも踏みこたえて倒れたりはしない。
逆に体を持ち上げて巨躯へと投げ飛ばす。
投擲されたほうも受け止めたりはせずに同じ動作で回避と攻撃を。
スェーバックで紙一重にかわすものの前髪の先端が数本散った。
小刻みなステップで徐倫はフェルディナンドの背後へと回り込んだ。
瞬時にして反応して振り返って見せるもそこに彼女の影すらない。
冷や汗をかく博士であったがすぐに居場所は察した。
恐竜の視線を下へと向けさせる――――いた。
地面スレスレを滑り足元を狙う右腕を軸とした両足。
軽くジャンプする事により彼女の脚は虚空を舞った。
しかしその回避すらも想定内、折込済みの出来事。
体を捻り、左腕も地面に付け体の角度を変化させる。
回転力を上手く利用したことにより、地面と水平であった体はさしたる力を使うこともなく向きを変えた。
地面とほぼ垂直にそびえ立つような形へと。
両肘、両肩、両膝と順に折りたたんでいく。
マズイ、直感がそう告げるものの体は制御できない。

「そこぉっッ!」
「ぶげっ!」

先程は間逆の順で伸ばされていった間接達。
それぞれの加速が生んだスピードと天へと延びた体の軌道は形容するならばロケット。
二つの足が顎に衝突し、自慢の牙と吐き散らかしながら宙を舞う恐竜。
倒れ伏した相手を再起不能とするべく徐倫が迫る。
が、ラッシュのダメージより回復した方が行く手を遮った。
舌打ちと共に徐倫はそちらと向かい合う。
その隙にフェルディナンド達も立ち上がった。
再び彼女の足がステップを刻み始める。
蝶の様に華麗に舞うものではなく、獲物を刺し殺す蜂のような鋭さを持ったそれを。
強攻すれば手痛い反撃を食らうが彼女は防御に専念しているのでそう攻撃は喰らわない。
徐倫の行動に博士は首を捻った。

(この動きを続けて何をやりたい? いくらスタンドの補助があろうとも限界は来るはずだ。
 そうだ、恐竜でもない限りは絶対に限界が出てくるはずなんだ。体力にはな)

事実、見るからに徐倫の体は疲弊していた。
全身を流れる汗、間隔の短くなった呼吸。
彼女のリミットを知らせるものは他にもいくらでもあった。
思考にふける彼を他所に彼女が何度目か分からないこちらへの接近を仕掛けてくる。
右腕を振り上げつつ、左腕による直線的な攻撃を。
このフェイントを彼女は完全に見切ったものの回避の際に足を滑らせた。
小さいほうの恐竜はこの隙を決して見逃すことなく走りよってくる。
彼女は薄く笑った。
スタンドの張り手を己の頭にぶつけて無理矢理倒れこむ。
対象を失った恐竜は勢いを殺せぬままもう一匹のほうへと突っ込み――――――


完全に不意をつかれたフェルディナンドと共に地面に倒れ込む。
地面に叩きつけられた痛みによって一瞬目を瞑ってしまった博士。
目を開けた彼が最初に見たのは拳を鳴らした後に、首を鳴らす徐倫。

「やっと捕らえたわ……オラオラオラオラオラオラおラオ来オラオラオラオラオラオラオラオラオラアアッッッ!!!」

51 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:18:23 ID:rlrKwoJp
  

52 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:19:24 ID:rlrKwoJp
 

53 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:21:14 ID:rlrKwoJp
 

54 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:23:24 ID:8Ly6kwG9
支援

55 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:24:39 ID:pou62lK5
面白いけどすごく誤字いっぱいで指摘しきれない
支援

56 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:26:04 ID:EhaMXu7b
気がつけば彼は民家の中にいた。
アヴドゥルの体を動かそうにも動かない。既に体の限界が来ていた。
小さく溜息をつきつつ一旦スタンド能力を解除。

(この際あの女を恐竜としてしまうか? ……いや、駄目だ。
 二匹いてやっと互角な上にイギー監視をやめるわけにはいかない。
 生きた人間を恐竜化するには数分かかるというのは思わぬ欠点だな)

心の中で愚痴を言いつつ彼は二人の死体を見た。
いや、正確には繁華街近くで拾った男の死体をだ。
元から凄惨な様子であった死体がどう変化しようと彼になんら感慨は湧かなかった。
殴られ続けたお陰で一層損傷の激しくなった頭部へとメスを突き刺す。
周りの肉が寄り合って再び新しい命へと昇華する。
幾度も見てきた光景であるし、これからも数知れず見ていくことになるであろう景色。
死体を見たときと全く同じ感情を抱きながら彼は変化を見届けた。
傷一つない鱗、綺麗に生え揃った牙、少しのへこみや欠けもなく尖った爪。
今までボロボロだったのが嘘のように恐竜は元通りに蘇った。
そして彼はアヴドゥルを見ようとする………首を動かす事ができない。
完全に無意識の内に彼は自身の体に金縛りをかけていた。

(何を馬鹿なことをやっているのだ私は!
 アヴドゥルはもう死んだ。これだけは何があろうとも覆しようがない。
 今更したいがどうなってようとも問題はないはずだ!)

強い調子でまくし立てる心中とは裏腹に体は動かない。
激しい苛立ちが彼の胸へと去来した。

(早くするんだ! 早くしなければ今にもあの女がココへと来てしまうぞ!
 見ろ! 見ろ! 顔を僅かでもいいからそっちへと向けるんだ!)

精神が無意識を凌駕し始めた。
油の切れたブリキのおもちゃのようにぎこちなく回る首。
彼は見た、アヴドゥルであった何かを。
巨大なハンマーで何度も叩き潰されたかのような顔、特に顎は原型をとどめてすらいない。
衣服の所々が破れ、筋肉に覆われた肉体は所々が陥没している。
手と足の関節は無数に増え、通常ではありえぬ方向を向いていた。
思わず目を背けるフェルディナンド。
あまりにも情けない自身を叱責しつつ再度彼の方を見た。

眼孔から零れ落ちた彼の左目と目が合った。

込み上げる猛烈な吐き気を必死に飲み込む。
目に滲んだ涙は果たして何が原因だったのだろうか?
吐き気から来るものだったのか? それともあるいは――――。
これは本人であるフェルディナンド自身にすら知り得ない難題。
だが、答えの一つが彼の脳裏を過ぎった。

『自分は間違っていると』

彼はその後に無理矢理言葉を続けた。
あたかも折れそうになる自身の心を納得させるかのごとく。

「だからこそ、私はこの殺し合いで優勝する必要があるんだ」

半ば呟くような弱弱しい宣言。
しかし少しであるが吐き気が和らいだ気がする。
今度は迷うことなくアヴドゥルの崩れかかった死体を見据える。
メスで彼の体に一筋の傷を付けた。
徐々に異形へと生まれ変わりつつある彼の姿を眺めながら、
博士は「そういえば何故あの女はこちらへと来ないのか?」と考えた。

57 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:32:05 ID:EhaMXu7b
自身がブチ破った穴より小さいほうを外に出して見回りをさせる。
左右、念のために上を見てみるものの人影らしきものはない。
共有した視界に映るのは風に流されて飛んでいく雲だけ。
軽く息を吐き出し、少し時間を置いてみるものの今までに戦っていた相手は姿を見せない。
もしや恐竜の秘密に気付いたのか? と案じるも、気付かせる要素はなかったと自らを納得させる。

「助かったのはやつなのか? それとも私か?」

何気なく呟いた一言に答える相手はこの場において誰もいない。
このことが沈み気味だった彼の気分を更に悪化させることとなった。
安全を確認すると恐竜の中に忍び、民家の敷地内から出て行こうとする。
同時に背中を襲った重量感、違和感。
何があったかを彼が知るまもなく暴れだす恐竜。

「もらった! 一か八かの勝負だったけど……どうやらこの賭けは、私の勝ちの様ね!
 アンタ達は動かないものを見れない! 確かめるためとはいえ、怪獣を目の前にして動かないってのは辛かったわ」
「なんだと!? なぜだ! どこでそれに気がついた!」
「答えてあげるわ」

その言葉と共にストーン・フリーの腕に込められた力が一層強まる。
此処へ来て博士は、徐倫が恐竜の首を極めているのであるという事に気がついた。
体をゆすって振り落とそうとするも両手両足は決して緩まない。
体内にいるフェルディナンドの顎から冷や汗が滴り落ちた。

「まず最初にこいつが襲ってきたのは私が動いてからだったわ。
 それに次の攻撃の時も私の頚動脈を外した。格好のチャンスだったにも関わらず。
 私はその時とある事情で完全に動きを止めてたの。ついさっき気がついたんだけどね」
「バ、馬鹿なッ!? たったそれだけの手がかりで特性を見抜いたと!?」
「言ったでしょう、私は確かめてみたってね。
 ラッシュで吹き飛ばした後、私は穴の脇でジッとしていたの。その結果は……ね」

言い終わるや否や徐倫はトドメを刺しに走った。
これまで完璧に動脈を締められたならば恐竜の生命力を以ってしても数分と持たないだろう。
小さいほうを動かそうにも同士討ちを恐れるあまりについつい躊躇ってしまった。
活路を見出すために博士は恐竜を跳躍させ、宙で姿勢を制御し背を下へと向ける。
総重量は計り知れぬが確かなことは一つ、背中に張り付いていた徐倫が重傷を負ったということ。
巨躯から繰り出されるボディプレスによって彼女は喀血する。
けれども締める腕の力だけは何があろうとも緩めようとはしない。
知らぬうちにフェルディナンドの口から漏れていたのは恐怖の叫び。

「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ねええええええええええええええええええ!」

半狂乱になりながら同じ動作を二度、三度と繰り返す。
怖かった、ただひたすらに彼女の事を恐れ続けた。
敵の弱点を見抜くために自分の命ですらも惜しまずに懸けること。
どんなにダメージを食らおうと決して喰らいついた牙を離さないこと。
つまりは、死を恐れぬ彼女の精神が怖かった。
空条徐倫の全ての挙動が博士の大脳よりアヴドゥルの記憶を引き起こす。
年齢も人種も、性別すら異なる両者の姿が不思議と重なって見えた。
唯一違うのは、アヴドゥルはフェルディナンドの命を救ったが、徐倫はフェルディナンドに命を狙われているということ。
彼にとっては何故かそれが許されざることのように思えた。
故にそれを振り払うかのように彼は攻撃の手を休めない。
その目は血走り、彼の理知的な雰囲気を霧散させていく。

徐倫のほうも最初の一撃以外は命に関わりかねないダメージは負っていない。
とはいっても一撃一撃の非常に重い攻撃は彼女の体を徐々に蝕んでいく。
何発目だろうか?
彼女は再び口より血を吐き出し、同時に一瞬だけ緩む拘束。
恐竜はその刹那すらも逃さずに必死に身を捩る。
そして、恐竜は小さくも堅牢であった檻より脱出を果たした。

58 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:35:08 ID:EhaMXu7b
「君のその精神力、ああ感嘆したよ。本当に尊敬できると思う。
 だがな、私はそういう“愚か”な生き方をするヤツの気持ちが分からないんだよ。
 あぁ本当に君は狂人のようにしか見えない。尊敬できるというのは嘘ではないが決してなりたくはないタイプの人間だ」

内臓をやられた痛みで腹を押さえる徐倫にとって意外な言葉が投げかけられる。
ふと顔を上げてみるも大きい顎から続く言葉はない。
ただ、一瞬だけ頭を垂れた後に彼女に襲い掛かるのみだ。
タイミングをずらして襲撃する二頭にもはや反応することは出来ない。
軽い舌打ちと共に砂を一掴み掬い上げ恐竜達へと投げる。
幾ら動体視力があろうとも広がる粒子を完全に避けるのは不可能。
目に入って時間を食うよりはましだと一瞬だけ瞼を下ろす。
攻撃が来る事を覚悟するも、聞こえたのは去っていく彼女の足音。
逃げたとは判断しない、あくまでも戦略的なものがあるのだろう。
短い交戦で彼女ならば敵を見逃さぬだろうと判断する。
先程までは使っていなかった、嗅覚、聴覚も全て使用して彼女を追いかける。
その姿はまさに捕食者。
太古から蘇ったハンター達は獲物を追い詰めるべく走る。
匂いから判断すれば彼女はこの茂みへと入ったのだろう。
非常に細い路地。サイズ的にアヴドゥルのほうが入れば一杯一杯になるはずだ。
彼女のほうもそれを見越して此処を選んだのだろうと判断する。

「この程度の浅知恵で私を倒せると思ったか……。
 稼いだ僅かな時間ではどの程度体制を整えられただろうか? 殆ど何もないだろうな」

小型で比較的自由の利くであろう小さい恐竜を路地へと突撃させる。
自身達はといえばその場からの跳躍で屋根の上に飛び乗った。
巨獣の着地の反動により、瓦が数枚割れ砕ける。
そう進まないうちに小道に立ちふさがる徐倫の姿を見た。
息も荒くなっている彼女の消耗は相当激しいのだろう。
体のバランスもおかしく、左寄りに傾いてしまっている。
好機と判断したフェルディナンドは構わず恐竜をけしかけた。
彼は大きな事を見逃している。
ストーン・フリーの明かされていない能力を完全に失念していた。

「私の能力、まだ教えてなかったわね? 私の能力はストーン・フリー。
 シンプルにたった一つの分かり易い部分だけを教えてあげるわ。
 自分の体の一部を“糸”に変化させることが出来る、これが私の力よ。
 そしてやれやれだわ。近距離パワー型の脚力をしてもこれは中々骨が折れたわ。
 バランスも悪い、千切れそうになる足が痛い、本当に散々ね。
 でも、これで私が一歩上をいくわ、コイツをこの戦いの場から退場させる」

フェルディナンドはついつい彼女の話を聞き入っていた。
これはジョースターの血筋が持つカリスマか、それとも黄金の意思の眩さか。
どちらにしろ彼が精神力で彼女に一瞬であろうとも押されてしまったのは事実だ。
その事を理解し、眉間に皺がよるも戦闘における集中力は切らない。
恐竜の数メートル手前で徐倫の体のバランスが一瞬崩れた。
今までは匂いで彼女の位置を把握していた彼が彼女の体を改めて視認する。
左足がなかった。いや、足の付け根辺りから伸びる糸のみが存在した。
糸の先は動いていないから何があるかは分からない。
だが、伸びた糸の高度からしてあれしかありえないだろう。

「弱ったとはいっても私のスタンドは近距離パワー型。
 問題は折ることよりも支えることだったわね」

彼女の溜息と共に木が倒れていく。
前に飛ぶか? 彼女がいるから無理だ。
左右へ飛ぶか? 壁に阻まれて不可能だ。
飛ぶか? 木との激突が早くなるだけだ。
後ろへ逃げるか? 最後にこの選択肢が出てきたのは彼の成長によるものだろう。
しかし、この場においてはそれが仇となり、逃げ遅れた恐竜は―――巨大な質量によって押しつぶされた。

59 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:38:03 ID:EhaMXu7b
「さて、これであんたと私の一騎打ちって状況が出来たわね。
 今までの戦局を見る限りだと私のほうが有利みたいだけど、今の私は傷だらけだわ。
 要するにどっちが勝つのか分からない。あんたも分かっているでしょう?」

潰され、身動きもとれずに呻いている恐竜を一瞥し徐倫は路地より出る。
そして居場所も分からぬ対戦相手へと宣言した。
丁度他の家が影となり見えない位置に立っていたフェルディナンドは悩む。
バカ正直に正面へと立つか、このままこの場を去っていくか。


自分の理性的な部分は告げる『このまま立ち去れ』と。
確かに先程までの白兵戦から考えて勝率がないわけではないだろう。
しかし、彼女の持った糸の力。変幻自在なそれは戦力としての価値を図りにくい。
あの時まで一切能力を明かさずに乗り切った駆け引きも自分に真似できるかどうか。
身体能力などの基礎値では勝るも、戦い方は明らかに向こうのほうが上手い。
それでも私の感情的な部分は叫ぶ『立ち向かって打ち勝て』と。
彼女を越えればアヴドゥルの幻影に縛られることもなくなる、そんな気がした。
強く、気高い彼女を踏み台にすればどこまでもいけそうなのだ。
弱き心を断ち切るためにも此処で彼女は倒さなくてはならないと思う。


彼の心の中の拮抗は―――――後者が勝った。
皮肉な事にも決め手となったのは『覚悟を決めた相手に覚悟を持たぬ私が勝てるのか?』という彼の否定した精神論であった。
声が聞こえてきたほうより、背を向けてフェルディナンドは去っていく。唯一つの置き土産を徐倫に残して。

「面白いことを一個だけ教えておいてやろう!
 さっきお前が潰したあの恐竜。実はあれの中身は人間だ。
 信じられぬなら見に行け、後悔すると思うがな」

吐き捨てると共にダイアーにかけたスケアリー・モンスターズを解除。
今頃は木の本で潰れた無残な死体という光景が展開されているのだろう。
そう、これは彼なりの徐倫に対する復讐。
死体を見て彼女がどう反応するのか?
自分が殺したと思い込み、再起不能の廃人となってしまうのか?
そこまでは行かなくても少なくとも衝撃だけは受けるだろう。
想像すると黒い快感がフェルディナンドを包む。
下卑た喜びに浸りかけた事に少し顔をしかめつつ、彼は戦場より離脱した。


★  ☆  ★

60 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:41:05 ID:EhaMXu7b
逃げられた! いや、最後の発言は……罠?
それとも本当にあれは……人間が恐竜に変えられただけだって言うの?
どちらにしろ私はあの場所へ向かわなくてはいけないみたいね。
重い足を引きずりつつ一歩づつ着実に進んでいく。
アバッキオにイギーは無事かしら?
アナスイ、ウェザー、FF、父さんもいい仲間を見つけたのかしら?
向こうにいるエンポリオとエルメェス、それにママはしがらみを忘れて上手いことやってるのかしら?
ちょっとだけ涙が零れたけど、これくらいは許してくれるわよね?
そして私は引き倒された木の鎮座する場所へとまた辿り着いた。
正直に言っちゃえば嘘だって思ったわ。
だって小さすぎるし、本体のほうにある首輪がついてなかったから。
けどね、本当にその人はいた。
顔もどうなってるか分からないくらいに潰れて、肉が細切れになったその人が。

「あっあ……うあああああああああああああああああああああああああああ」

間違いない、私が……私が殺してしまったんだ。
ラッシュを何回も当てた上にこんな木で押しつぶしたんだ、肉体だって無事なはずがない。
潰れてなのがどうなっているかわからない顔を私は見た。
この人は私が殺した。
家族も恋人も仲間もこの殺し合いの会場にいるんだろう。
次の放送でこの人の死を知ったらどんな風に思うんだろうか?
いや、悲しまないはずがない。きっと泣きじゃくってしまう。
どんなに心の強い人だって悲しみを感じないはずはないんだ。
私のせいで、私が殺しちゃったせいで。
ボロボロになった死体じゃせめてもの供養すら出来ない。
見ただけでとても……とてもショックを受けちゃうだろうから。
崩れた頭部へと私は駆け寄って抱きしめた。
この人の知り合いを探そう、何があっても罪を償おう―――――



そこまで考えた所で、彼女、空条徐倫の意識は完全に途絶えた。
あまりの現実感のなさに逃避しかけていた彼女の思考も、起き上がったときは完全に復活するのだろう。
その時になって彼女がどのようなことを考えるかは分からない。
たった一ついえることは彼女は“人殺し”という罪を己に科しまったという事だ。
冷静に考えれば分かっただろう、この死体に存在する様々な矛盾点に。
生憎と彼女は完全に取り乱していたのだが。



「父さん……」


彼女の顔で涙が河を作る。
風は、そんな彼女の頬を優しく撫でた。



★  ☆  ★

61 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:44:05 ID:EhaMXu7b
私の行動は間違っていない、決してだ。
そうだろアヴドゥル君。と言ったところで君は返事をしてくれない。
なぜなら君はもうモハメド・アヴドゥルじゃないからだ。
あぁそうだ、何度も確かめてきた事実じゃないか。
ならば何故私は“あれ”出来なかったんだ?
思いつかなかったわけがない、最も基本的なことを忘れるはずがない。
下敷きにされたヤツの恐竜化を解除すれば動揺して隙も出来るはずだ。
不可能ではない、むしろチャンスには溢れていたはずだ。

「そうだ、アブドゥルを捨て駒にしてでもあの女を引っかけば私たちの勝ちだったんだ」

苦々しげな声が私の口から漏れ出した。
本当にそうだったと今になっては思う。
私がアブドゥルの体内から出て、彼をあの女の下に突撃させる。
先程までならば百%の確立で爪の一撃当てれるかどうか不安だったが、
人間一人分の重さがなくなったことに加え、彼女の傷つきようから判断するに確実に一かすりはいった。
無謀な賭け等ではなく、論理的に考えれば当然の行為だった筈だ。
確かにアブドゥルが本体だと思っていたあの女の口ぶりからいえば彼の体も無事にはすまない。
民家で見たときよりも更に酷いものになるってくらいは容易に想像がつく。
だが! それが一体なんだったというのか!?
勝つためならば些細な問題は切り捨てるべきじゃないか!
これではまるで感情論などという下らないものに私が振り回されているみたいではないか!?
……いや、確かに私は振り回されている。
結局私もさっきの狂人どもと同類というわけか?
尊敬を知らぬものと同じ程度の頭しか持ち合わせていないというのか?

「クソッ、私がこんなにも弱い人間だっただと!?」

口調が荒れてしまっているのがはっきりと分かった。
普段ならばこんな物言いをすれば周りから奇異の目で見られるだろうな。
恐竜の中から這い出てみる。
アブドゥルが私を目で追うが、瞳からは知性の欠片も感じられない。
彼が私の命を救ったというのは紛れもない事実だ。
そうだ、それだけは自覚している。
彼の持つ黄金の精神に私が多少なりとも感化されたのは認めよう。
仲間へと遺志を伝えようというのも私が彼に対して恩義以上の感情を抱いていることも確かだ。


だが! 私は一体どうすればよいというのだ!?
イギーが死んだというのをついさっき翼竜が教えてくれた!
花京院の元へと飛ばしてみたが彼もまた死んでいるのかもしれない!
どうすればいいというのか!?
彼の最後の願いを完遂することが不可能となった私はどうすれば!?
誰でもいい、是非とも教えてくれ!
私は弱い人間だ。そうだ、死ぬのが何よりも怖いと思っている!
荒木にだって勝てる気がしない!
ロビンスンやリンゴォとやらが言った男の世界ってヤツを理解できないんだ!
だったら私は殺すしかないじゃないじゃないか!
後戻りなんてできっこない、誰も殺してはいないがあの女にやったことは許させるはずもない!
そもそも荒木に勝ち目がない以上は殺すしかないじゃないか!
何故だ、何故君は命を懸けて満足げな顔を遺して死んでいくことが出来るんだ!
分からない、私には到底分かりっこない!
たった一つだけ言える事はある。
結論を既に下してしまったという事だ、私には悪にしか思えないがこれしかない。

優勝して元の世界へと帰る



私には―――――――――――それしかない

62 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:44:35 ID:8Ly6kwG9
shienn

63 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:47:03 ID:EhaMXu7b
★  ☆  ★



「しょうがねぇなぁ」

溜息混じりに発した口癖はかなり疲れた感じだった。
本当に俺という人間はしょうがない。
いや、違う。俺は“どうしようもない”野郎だ。
アバッキオの元へ俺はあえて戻らなかった。
あいつは勝ち目がなかろうとも敵の元へ向かってしまう。
直感だが中々不思議と間違っているという気はしねぇ。
だけどよぉ、それはただの犬死なんじゃねぇのかよ?
そんな事を考えちまう俺は間違いなく臆病者の部類に入るんだろうな。
けどな、しょうがねぇじゃねぇか。
俺だって一度喰らいついて勝機が見えた状態なら逃げたりしないぜ。
だが……あの状態からは勝ちってヤツが連想できなかったんだ。
博打は大好きだが負ける可能性のほうが高いヤツには絶対にのらねぇ。
賭けてるのは命だってんだからなおさらだぜ。
生き残るためには大勝負をしっぱなしよりは小さい勝ちを重ねてく方が確実だしな。
そもそもアイツは無茶して自分で倒さなくとも何とかしてくれるヤツがたくさんいやがる。

「俺は……何なんだ畜生!」

頭を使えばどんなくだらねー能力だって使えるようになる。
日頃からそうやって豪語してきた俺はまるっきりピエロじゃねぇか。
ウチのチームを見渡すだけでもアイツに勝てそうなやつは幾らでも存在する。
むしろ俺以外ならば全員勝利を収めるんじゃねぇか? って思うほどだ。
許可したもの以外は入ることの許されない鏡の世界を生み出す能力。
半径200m以内の生物を全て老化させ朽ち果てさせるガスを出す能力。
近距離型の力、速度、更に遠距離型の射程までも兼ね備えてる能力。
ほぼ無敵の“息子”を量産し本体には全くダメージが届かない能力。
触れたもの全てを凍てつかせる矛と堅牢な氷の鎧を備えている能力。
磁力を操り、敵の体内から刃物を産んだり自身を透明化させる能力
あぁ、こんな奴らの中において俺の能力だけが無力だ。
遊びで殺しをするようなゲス野郎に不覚を取るのは俺だけだ。
暗く沈んでいく思考、仲間が見れば間違いなく何やってんだって笑うんだろうな。
別方面に考えを飛ばすために別のことを考えてみる。

「アバッキオは……結局どうしたんだ?
 一人で向かったんだよなぁ、おい。間違いなく死んでやがるか」

あいつの死に関して悲しんだりはしない。
元来ならば俺の所属しているチームは、ヤツのチームとの血みどろの抗争をおっぱじめる予定だったんだ。
この殺し合いがなければ俺とあいつらは殺しあってたはずなんだからな。
その辺に関しては俺も冷静に考える事ができるぜ。
確かに見殺しにしちまったのは悔しいっちゃ悔しいが身を裂くほどじゃねぇ。
あぁ、立ち向かったであろうあいつを尊敬するって気持ちは多少なりともあるがな。
奇跡が起こったとしても相打ちどまりなんだろうよ。
……なんだかんだでアイツにも少し情が移ったのかも知れねぇな。
なんだかんだ言いつつも少しだけだが虚無感を覚えちまってる俺に気がついた。
戦闘中ではあったがあいつと笑いあった事もあったしよ。

「いい加減俺も疲れちまったな」

疲れたのは体か、それとも心か。
二度目の溜息と共に頭に手を伸ばして頭部をかきむしる。
カビがどうたらってのは気にしねぇ、イライラをぶつける対象が他にねぇんだからよ。
独特な音が俺の頭から響く。
ふと何気なく腕を少しだけ慎重に降ろしてみた。

64 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:48:39 ID:qpFnc7J/
そう!支援ッ!

65 :BIOHAZARDW ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:50:04 ID:EhaMXu7b
カビが生えない。



本体が死んだか? 咄嗟に思ったがそれはありえないなと否定する。
アバッキオが勝てる確立はさっきも言ったとおり奇跡でも起きねぇと無理だ。
どっちかといえば射程距離とかあんがえるのが打倒だろうな。
少し思考が飛び掛っている俺の目の前に一人の女の姿が見えた。

「あれは……アバッキオと行動していた女。確かジョリーンって呼ばれてたよな?」

職業柄人の名前と顔を覚えるのが得意な俺はすぐに脳みそのデータベースから女の名前を持ってきた。
あいつの仲間って事はある程度信頼を置いても安心ってことだな。
だが、これだけは不安だ。
このことをほって置いたら後々でやばいくらい面倒なことになる。
それは――――――――



女が潰れた男の生首を持ってやがるってことだ。
面倒ごとはしばらくゴメンこうむりたいぜぇ。
さて、俺は最初に考えたのと同じ三択を考えなくっちゃいけないって訳だな。


「しょ〜〜〜がねぇなぁ〜〜〜」



66 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:50:10 ID:8Ly6kwG9
まだ支援だッ!

67 :今にも落ちてきそうな空の下で ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 00:51:11 ID:EhaMXu7b


















ジョジョの奇妙なバトルロワイヤル 第124話 『BIOHAZARD』 終幕






          『今にも落ちてきそうな空の下で』




















68 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:52:56 ID:rlrKwoJp
 

69 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:53:38 ID:rlrKwoJp
  

70 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:54:23 ID:rlrKwoJp
   

71 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:54:34 ID:8Ly6kwG9
  

72 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:54:39 ID:pnUhVpLI
支援という形になるな…

73 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:55:03 ID:rlrKwoJp
 

74 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:55:59 ID:rlrKwoJp
  

75 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:56:23 ID:8Ly6kwG9
支援!

76 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:56:42 ID:rlrKwoJp
     

77 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:58:15 ID:pou62lK5
名作すぎる・・・
紫煙

78 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:58:32 ID:rlrKwoJp
 

79 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:58:53 ID:kSehfr9b
支援

80 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:59:34 ID:kSehfr9b
支援

81 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:59:54 ID:rlrKwoJp
  

82 :今にも落ちてきそうな空の下で ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 01:00:27 ID:EhaMXu7b
「そろそろお目覚めの時間じゃないか? レオーネ・アバッキオ」

不愉快な、聞いてるだけで反吐を吐いちまいそうな声で俺は目を覚ました。
最初に知覚したのはずぶ濡れとなった体。
気持ちワリィ……起き上がってシャワーを浴びそうと思ったが体が動かねぇ。
手や足が動いている感覚はあるんだが体だけが起き上がらない。
意識も微妙にはっきりとしねぇのは寝起きだからか?
漆黒の世界から視界が帰ってきた。
見えたのは床、目線を動かすと見えるのは見覚えのない一室。
ははっ、聞こえた声はそういうことか……そういうことなのかよ!
全部分かったぜ。
どれもこれも俺の一炊の夢だったって訳だ。
ムーディ・ブルースでヤツの首をへし折った俺なんざいない。
いるのは戦う事も出来ずに貧血でぶっ倒れた馬鹿野郎だけだ。
納得いくぜ、幾ら精神が昂ぶってても俺のスタンドじゃ小枝を折るようには行くまい。

「どんな気持ちだ? 仲間を失い、やっと俺の元へと辿り着くも自分は瀕死。
 戦う事すらできずに死んでいく貴様は一体どのような表情を見せてくれる!?」

本ッ当に趣味の悪いこった。手に持ったハンディカムはそういうことかよ。
倒れた時にカビて死なないってのもあれか?
黴に覆われて死ぬのはつまらねぇってコイツが解除したってわけか?
疑問だらけの俺だがこれだけは確実だって分かったものもあるぜ。
俺の“死という結果”だけは何があっても覆しようがねぇって事はな。

「ふふん? 貴様はすぐにでも死んでしまうものだって勘違いしているのか?
あまり馬鹿なことを考えるのはやめたほうがいいな。貴様には義務があるのだから」
「なん………だっ……て?」

思わず聞き返しちまったが大方予測はついている。
これから俺は碌な目に遭うことなく死んでいくのだろう。
案の定ヤツは歪んだ笑顔を浮かべていやがる。
俺の近くへ寄って来たと思いきや足の裏で頭を押さえつけてきやがった。
もはやムカつくという感情すら湧かねぇ。
上からは何かのボタンを押すような音が聞こえてくる。
そして俺の眼前に手中に納まりそうな機械が置かれた。
これは……やつの持っていたハンディカムか。
認識すると同時にヤツのスタンドが俺の体にのしかかり、無理矢理瞼をこじ開ける。

「さて、お前の友人の最後が如何なるものであったか見せてやろう。
 大丈夫、彼は十分すぎるほど立派に戦ったさ。俺がヒヤッとする位にな」

強制的に開かされていた目が更に見開いた。
俺の無様な姿を野朗は「こちらも保存したいくらいだ」などとほざきながら見やがる。
見たかぁねぇ、死体を見て納得はしたが殺された場面なんざごめんだ。
そんな俺の願いも無機質な機械は答えてくれない。スクリーンはただ事実だけを映し出す。
イギーが接近してくるところから再生は始まった。
しかし、辿り着いたアイツが見たのは地面に落ちているヤツの右腕。
逃げろ! 俺の心の叫びも“過去”には決して届かない。
白兵戦を挑むクソ野郎に応じる二人。
地に置かれたビデオは淡々と出来事を記録してゆく。
やつを追い詰めた二人。
絶体絶命の状況にも拘らず俯いた顔の中でアイツは薄く笑っていた。
罠だ! まだ間に合う! 深追いだけはするんじゃねぇ!
背後から体と分断していたはずの右腕が引き金を引く。
放たれる鉛弾。
そしてイギーは崩れ落ちた。
糞生意気で言う事なんざ一つも聞かないアイツは……死んだ。

「バカ……野郎が……無茶すんなって………言ったろうが」

83 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:01:07 ID:qpFnc7J/
シエーン!!!

84 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:01:21 ID:rlrKwoJp
 

85 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:02:02 ID:rlrKwoJp
         

86 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:03:04 ID:rlrKwoJp
 

87 :今にも落ちてきそうな空の下で ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 01:03:08 ID:EhaMXu7b
「あぁ、いい顔だ。本当にいい顔だ。ところでアバッキオ、話は変わるが人が幸福を感じるのはどんな時だと思う?
 一つは絶望が希望へと変わった時だ。さっきの犬、イギーといったな。ヤツとの戦いはまさにそれだったよ」

ココで一旦間をおいて俺の表情を盗み見しやがる。
ド畜生が、悔しがる俺の表情すらヤツの思う壺ってヤツか。
大分霞んできた俺の世界でやたらとハッキリ聞こえてくる声が気にくわねぇ。

「もう一つの方も教えてやろう。絶望しているヤツを上から見下している時さ。
 そう! 今のお前を見ていること! それこそが俺の幸福だ、レオーネ・アバッキオ!」

満足したんだろ? さぁさっさと俺のことを殺せよ。
声には出せない抵抗の意思を瞳に込めて睨む。
それすらもヤツの快楽への肥やし程度にしかならない。

「殺してくれってか? 俺はな人の苦痛を見ることが何よりも大好きなんだ。
 だからこそ……血を失ってじわじわと死んでいくお前が見たいんだよ。
 とはいっても少々の間ココからは立ち去らせてもらうんだがな。
 なぁに、不安がる事はない。覚えていたら再度見に来てやろう」

そう言ってヤツは本当にこの部屋から出て行きやがった。
階段を下りていく音がやけに大きく感じられる。


やっと訪れた静寂の中で俺は孤独となった。
さっきまでは心がブレまくっていたせいで他の事を考える余裕が無かったが今は別だ。
あれこれと色々なモンが頭の中を通り過ぎていく。
走馬灯ってヤツか? それを見ながら俺は一つの結論に達しちまった。
いや、前から気がついていたことを改めて突きつけられたって感じか。
何をするにしても中途半端なダメな野郎が俺の真の姿だってことに。
殺し合いが始まって早々に任務の護衛対象を失った。
託された伝言の意味は結局分からずじまいだ。
もう少し深く考えてみるべきだったってのによぉ。
これじゃあ折角命懸けのメッセージを送ったってのに無駄ってヤツだ。
そもそも俺に託したメッセージは全部無駄だったんじゃないのか?
倒すと誓った相手も既に死亡していた。
俺は詰まる所ただの傍観者だったってわけなのか?
じいさんとオッサンが戦っている間に俺は何をやっていた?
マヌケにもサンタナの記録を見て一人でイラついていただけじゃねーか!
そうだ、俺は結果すら見届けることの出来なかった負け犬だ。
俺がやったことといえば全てが終わった後にコソコソと覗き見をしただけ。
とんだお笑い種だ!
イギーの足を引っ張ったのも俺。
あの程度の罠なら気がつけていてもおかしくはないはずだ。
いや、気がつかなくてはいけなかったんだ。
そうすれば少なくとも足手まといだけにはならないで済んだ。
徐倫のヤツが勝手に交わした“帰る”って約束も果たせそうにねぇ。
俺たちが死んだ事でアイツが泣かなきゃいいんだが。
いや、絶対にアイツは俺達の死を知って泣くだろう。
だから俺達は絶対に生きて帰らなくてはならなかった。
はっ! 約束の一つも果たせないガキは俺じゃねぇかよ!
出来ないならあの場できっぱりと言い切ればよかったんだ。

俺は全く成長しちゃいねぇ。
あの人を殺し、この世界へと足を踏み入れてから一向に成長してねぇ。
なぁ先輩。あんたから見たら俺はどんな風に見える?
正義を信じ、正義に殉じたあんたから見ればな。
笑うかい? 怒るかい? それとも泣いてくれるのかい?
だよな……死んだやつの気持ちなんてそんなの分かるはずねぇ。だからこそ俺が納得するために何かしなくっちゃいけねぇ。
くだらねぇ人生だったが最後にカッコつけるくらいならアンタも許してくれるだろ?
後の連中へと託してみるくらいはよ。

88 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:03:44 ID:rlrKwoJp
   

89 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:03:56 ID:8Ly6kwG9
  

90 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:04:25 ID:rlrKwoJp
    

91 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:05:05 ID:rlrKwoJp
          

92 :今にも落ちてきそうな空の下で ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 01:05:13 ID:EhaMXu7b
立ち上がることは出来ないから這ってでも進む

俺が通った後には血の道ができるが気にしねぇ

壁際へ、ヤツの立っていた壁際へと必死に這い寄る

上半身が崩れ落ちた、もう力が入らない

痛みはない、それどころか全ての感覚が消えかかっている

目は完全に靄に覆われて全てが白くなった

衣服が床と擦れる音だけがやたらと大きく響きやがる

この程度の動きで息が切れ始めた

もう一度、最後に数十cm

このホンの僅かさえ動ききれば俺のムーディはいける

それでも俺の肘から先はびくともしねぇ

だから俺は肘を支えとして行軍を再会した

スタンドは最後の一瞬に全エネルギーをかける為に使用しない

あくまでも俺の力だけで辿り着いてやらぁ

そして俺は目的の位置で完全に崩れ落ちた

一瞬意識が虚空の彼方へと飛んでいく

いや、意識ではなく俺の命が出て行こうとしていたのだろうな

気を抜けばあっという間にあの世へと行っちまいそうな状況

此処はゴールじゃねぇ、給水所だ

大きく深呼吸をし、ムーディ・ブルースを発現

目の見えない俺にもこれだけは分かった

コイツもまた限界であるという事に

体表が割れた陶器のように崩れ落ちていく

だが、まだ能力だけは使える

どうせすぐにでも消えてしまいそうな命だ、全てを注ぎ込んでやろう

ブチャラティ、ミスタ、フーゴ……すまねぇな俺はここでリタイヤだ

新入り、気にくわねぇが後の事は任せたぜ。精々チームの野郎たちと仲良くやりな

ホルマジオ、ジョリーン……託した情報は上手く使ってくれ

そしてトリッシュ、イギー、すまねぇな

ムーディ・ブルースの感覚がターゲットを捉えたことを告げる。


93 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:05:25 ID:pnUhVpLI
支援ッ!

94 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:06:30 ID:rlrKwoJp
 

95 :今にも落ちてきそうな空の下で ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 01:07:25 ID:EhaMXu7b

後は壁にこの顔を刻み込めば終わりだ

ふらつく足を動かさせながらムーディの体を壁に密着させる

力を込める 刻め 刻め 刻め!

感覚のないこの体であったが実感はあった、成功したと

安堵の息を吐き出しつつ俺は満足した

このいい気分のままで俺は死んでいこう




そんな俺のささやかな願いは誰かの足音によって終焉を告げた

一歩一歩順調に近付いてくるそれは誰ものか分からねぇ

ただ、そいつは俺の全てを込めたデスマスクへと近付き―――――――――





何かが砕ける音がした




いや、何かじゃねぇ。この場においてあれしかねぇんだ!

足音の正体は分かったがそれは何の意味も持たねぇ

「やぁアバッキオ。随分と早い再会になったな」

ゲロ以下の声が聞こえてきやがる

思考力さえも奪われていってるがこれだけは分かった―――――絶望―――――

俺は結局何も成し遂げることなく犬死。なんの意味もない死を迎えるのだ

「さっき言ったことの裏を返せば希望が絶望に変わったのは相当な悲劇だ。
 その不幸からくる絶望が俺を更なる喜びを俺に与えてくれるぞ! レオーネ・アバッキオ!
 お前と共にいたあの女に仲間の死の映像を見せてやるってのもいいかもしれんな」
「はっ……くそっ…たれ………が」



彼の断末魔は今までの弱った様子からは考えられぬほどに大きなものだった。
屋根の向こうに広がる空はどこまでも広く、青い――――――





【イギー  死亡】
【レオーネ・アバッキオ  死亡】
【残り 52名】

96 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:07:39 ID:rlrKwoJp
      

97 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:07:51 ID:8Ly6kwG9
支援支援

98 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 01:08:19 ID:rlrKwoJp
 

99 :今にも落ちてきそうな空の下で ◆xrS1C1q/DM :2009/06/25(木) 01:08:48 ID:EhaMXu7b

投下完了ですクソ長いのに支援に付き合ってくださって本当にありがとうございます
状態表を書き忘れてたのにたった今気付きましたが、疲れたんでまた後に投下します
誤字脱字は……ごめんなさいorz 特急で書き上げて推敲もろくにできなかったので悲惨になっちまいました
wiki収録前には必ず直しますんで許してください

それと、受験があるんでしばらく書き手から離脱します
ラジオとかには出没するかもしれませんがSSはしばらくかけません……

では、今までありがとうございました!


100 :創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 02:23:50 ID:pou62lK5
とりあえず駆け足で誤字拾ってきました
他にもあったような気もしますがとりあえずこれだけで
受験生のてを煩わせるのも気が引けますしね

>>424
彼の言に胡散臭そうな顔を上げるイギーであったが
彼の言葉に胡散臭そうな顔を上げるイギーであったが

>>440
リボルバーに込められた玉を確認し、
「玉」より「弾」の方が適切かと・・・

>>442
ヤツを一言で言ってしまえば趣味の悪い感染者。
ヤツを一言で言ってしまえば趣味の悪い観戦者。

>>445
私の覚悟を照明して見せるのだ。
私の覚悟を証明してみせるのだ。

>>446
隣にいる戌を一介の戦士として見た信頼を示す厳しい一言。
間違いとは言い切れないが「犬」じゃないか?

以上、前スレ

>>21
マンホールによって塞がれていた穴よりチョコラータは出。
何だかわからんが最後途切れてるっぽい

>>33
苦しいだろ? 痛いだろ> 諦めて出てきたらどうだ?
苦しいだろ? 痛いだろ? 諦めて出てきたらどうだ?

>>55
オラオラオラオラオラオラおラオ来オラオラオラオラオラオラオラオラオラアアッッッ!!!」
素直にオラオラでwww

>>61
先程までならば百%の確立で爪の一撃当てれるかどうか不安だったが、
先程までならば百%の確率で爪の一撃当てられるかどうか不安だったが、

>>65
アバッキオが勝てる確立はさっきも言ったとおり奇跡でも起きねぇと無理だ。
アバッキオが勝てる確率はさっきも言ったとおり奇跡でも起きねぇと無理だ。

>>82
起き上がってシャワーを浴びそうと思ったが体が動かねぇ。
起き上がってシャワーを浴びようと思ったが体が動かねぇ。

>>92
だから俺は肘を支えとして行軍を再会した
だから俺は肘を支えとして行軍を再開した

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